「里山資本主義ー日本経済は「安心の原理」で動く」藻谷浩介 NHK広島取材班 著

「里山資本主義ー日本経済は「安心の原理」で動く」藻谷浩介 NHK広島取材班 著
角川ONEテーマ21(新書)

この本も出来るだけ多くの方に読んでもらいたいと思いました。
先日ご紹介した堤さんの「(株)貧困大国アメリカ」はもはやホラーかなと思うもので、かなり地獄に突き落とされた感がありました、対照的にこの本を読むと希望で目が輝くかもしれません。

 この本も新書ながら、内容はとても充実したものとなっています。
堤さんの読後の感想で僕は、多様性が大切だと思う、と書いたと思いますが、この本にはそれがズバリ具体的に書いてあります。日本の各地で行われている里山資本主義の実践者たち、世界の事例も豊富に取り扱われています。

 今回は、本の中の具体例を紹介するのでなく僕が感じたこの本の核心部分を書いてみたいと思います。
マネー資本主義、コーポラティズムのような人間本意の思想であらゆるものを人間にとって(1%の人間にとって)都合よく合理的にすすめるグローバルな渦があります。
けれど、本当は人間は地球の自然の中の一部で、その自然に生かされた循環の一部です。自然の与えてくれる様々なものを最大限活かす工夫こそが未来につながる様式で自然にフィットする生活様式です。
 僕の好きなミヒャエル・エンデは「人間はすべてゲームにしてしまう、ありとあらゆる芸術、生活、経済、戦争でさえも遊びなのです。」といったたぐいのことを言っていたように思います。僕もいろんなことはゲームなんだなと思うことが多々あります。
 これまで行われてきた経済、貨幣のゲームはたしかに物質的豊かさ、安心、発展などの夢を私たちに与えてくれたし、それは善し悪しではかれないものだと思います。けれど、このゲームが極度にすすでいる世界、アメリカの現状は堤さんの著作を読む限り人間ばなれというか、最も人間らしいというか、ほとんどの人間にとっては地獄のような世界になってしまっているように思えます(アメリカ全部そうだと言うつもりはないですよ)。
 もともと物理的に制限がある地球という閉ざされた環境の中で住んでいて、それぞれの地域ではそこで限られた資源を巧みに使いこなすゲームをしていたのですが、産業革命以来、石油に代表される資源エネルギーを使っていくことで、この自然の循環ゲームは一時縮小していきました。逆に資源エネルギーゲームは、どんどん発展、拡大して、より人間にとって都合のよい便利さゲーム、手抜きゲームへと発展していき、それが経済、貨幣ゲームといった形でより合理的に便利になって世界中を覆いつくしています。
 けれど、このままでは立ち行かない。それは誰もがどこかで思っていることです。そして実際に立ち行かない人たちが出てきました。それはグローバルゲームではうまみがない場所、日本で言うと過疎化がすすんだ田舎、地方です。弱者、というよりプレーヤーでなくなってしまった田舎、地方の人たちはそれでもそこで生きて行かねばならず、別のゲームをはじめねばならないことになります。それこそが、もともとやっていた自然の資源を最大限活かして豊かな生活を送るゲームでした。このゲームはとても面白く、そして地球という限られたフィールドで持続できる可能性のあるゲームです。

 田舎生活、と聞くと質素で自給自足、偏屈、、、などのイメージがありますが、それは植え付けられたイメージです。この本で紹介されている人々、地域では、たしかにそういう負のイメージから出発しているところもありますが、なんのなんの、それらの負のイメージは都会という理想に立脚して田舎を見ていた過去のイメージに過ぎないことがわかります。負と思われていることは逆から見ればすごい資源です。放置されている山々は負の遺産?いや、そこには無限の価値が眠っている宝の山かもしれません。
 インターネットに代表される最先端の技術と結ばれること、貨幣という単一の担保でなく、自然と人々のつながりがあるという多様なセーフティネット、田舎はとてもエキサイティングな場所です。
 実は都会の中でも最先端な都市計画、スマートグリッドの考え方も多様性を持たせたモデルとして、田舎で営まれている多様な生活とリンクしていることが書かれています。
 僕は自然に帰れ、自給自足こそがすべて、というようなある種の懐古的な考えでは現実的に世界が変わるとは思えません。もちろん、自分が田んぼに関わって、自然の中の一部なんだということを強烈に感じてはいるので、僕は自然主義がとても大事だと思っていますが。
 里山資本主義でとりあげられている新たなゲーム、これはグローバルゲームにとって変わる可能性を十分に秘めたゲームだと思います。だって、どちらが楽しい?と問われたら大半の人は面白い方を選択するからです。新たなゲームは面白いです。このゲームが絶対上手く行くかはわかりません。けれど少なくとも次につながる希望がある。この希望こそが人間が最も必要な生きるパワーを与えてくれるように思うのです。

 長くなってしまい、そして本の内容をあまり紹介せずわかりにくい文になってしまったかもしれませんが、本当にかなりエキサイティングで価値観が変わる一冊だと思いますのでぜひぜひお読み下さい。


Takao

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