「マネー崩壊」

新しいコミュニティ通過の誕生 マネー崩壊」
ベルナルド・リエター著 小林一紀・福元初男訳 加藤敏春著

この本はすばらしかったです。
お金の本質を根本からとらえなおしてみたい人は必読です。
さらに、今の世界の貨幣システムをどう変革すればよりよい未来を作れるかを具体的に提案しています。
リエターさんは現代版ゲゼルのように見えます。
1999年に書かれた本なので、今の世界ではすこしずれている部分もあるかもしれませんが、それは些細なことのように思えます。
翻訳されている彼の著作はもう一冊あるので、さっそく注文しました。
絶版になっていて中古しかありませんが、、、
彼の著作は英語版では去年発表した新作もあるようです。
ちょっと頑張って英語版も読まねばと思う内容です。

タイトルからしてかなり難しそうな内容と思われるかもしれませんが、ふつうに高校生でも読める内容だと思います。

僕がはっとさせられた一節

「community = to give among each other」
コミュニティの鍵は、お互いに与え合うこと

現代のマネーは「debt」つまり債権から成っています。これは簡単に言い換えると椅子とりゲームなのです。
しかし、コミュニティはお互いに与え合い、そのつながりの中で支え合う信頼関係があることなのです。マイナスのはじまりのお金に対して、コミュニティはプラスからはじまるのです。
やっぱり贈りものがキーワードなのです。
しかし、今のマネーは悪いと単純に言い切れるものでもありません。
今のマネーシステム、つまり奪い合いシステムは競争を生み出します。競争は文明を加速し、拡大していく陽経済を生み出します。
逆に、債権から成らないマネーをデザインすることは可能です。その補完的通貨制度は、陰経済を生み出します。陰経済では、人間同士のつながり、自然資本との協調など陽経済に含まれないあらゆるものを含みます。
この本で述べられていることで最も納得したのがこの考え方なのですが、陰陽経済はお互いがコインの裏と表であり、どちらかのバランスがくずれてしまうと結果的にコイン自体が瓦解してしまうのです。つまり、今のままの陽経済に偏った貨幣システムだと必ず地球が破壊されてしまいます。
西洋的な二元論の世界では、陰と陽は対立する二つの要素としてとらえられます。二元論は区別する、切り分けることで認識するという価値観であり、それを超えるためには抽象度をひとつ上げることで矛盾がなくなるという方向性になります。東洋の陰陽道の考え方は根本で異なります。東洋的な陰陽は対立する二つの要素はもともと同じものが異なる要素としてあらわれ、認識されています。かなり似ているように思われるかもしれませんが、東洋的観点では、もともとのバランスを取り戻すという方向性になるのです。

ちなみに、僕は今の貨幣制度の中でも陰的活動は行われていると思います。お互いに与え合う関係性はたとえば営利企業の中、会社の人間関係の中でも行われていますし、村の中でも、家族の中でも行われています。貨幣として扱われないこれらの陰的活動が実は社会を支える大きな力となっていることは間違いないと思います。社会福祉制度(健康保険、年金)なども偏った貨幣を再分配するという意味では陰的活動だと言えるかもしれません。しかし、一方で債権としてのマネーが力を持ちすぎているのも事実です。あまりに当たり前と思っている今の貨幣制度(銀行が債権として貨幣を発行する利子がつくお金の制度 )の上にのっける形で社会福祉制度を行うよりも、マネーの仕組み自体をデザインしなおすことの方が根本的な解決になり得るのではないかと思います。泥の沼の中で必死でもがくよりも、泥に砂をまぜて沼を変えて動きやすくしてしまえばいいのではないでしょうか。

とは言っても、やはりシステムはシステム、それを作りだして利用している人間の心の問題がとても大事なのかもしれません。リエターさんのもう一つの著作は心理面でのお金の話しっぽいので、かなり興味がそそられます。


Takao

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